フィリピンの大学の授業を担当する~お試し出前授業

今週は旦那の授業のゲストスピーカーとなり、5つの授業(1時間半×5)を担当しました。トピックスは日本における階級、不平等です。格差と不安感、そして日本の状況を経済・社会環境を就労と所得を軸に説明しました。

導入部分では日本のイメージを階級や不平等について聞きました。

「テクノロジー」「富士山」「桜」「じゃぱゆき*」「アニメ」等・・・

先月訪れた日本の渋谷の交差点で撮った写真を見せて、日本とくにテレビなどで見るであろう都心部の写真を見せてイメージを共有します。

また、続けて何枚かの写真を見せました。
日本の路上生活者の家、派遣村、インターネットカフェ、等の写真。

日本の路上生活をされている人たちの家は、「フィリピンのとある地域と同じだ」という声が聞かれたり、派遣村の様子を「避難所」と考える学生さんたちが結構な数いました。

避難所は、自然災害の多いこの国ではニュースなどでも頻繁に見られますのでそれを連想したようです。インターネットカフェもフィリピンとは形態がことなるため、だれかは「オフィス」とそこに寝泊りしている人などと連想したようです。インターネットカフェで生活する人の話なども導入部分で少しはさみました。

日本は格差社会を経験しつつある・・・いや、すでに始まっていたのですが、アメリカなどの国に見られるような極端な富の偏り、あるいはカースト制度などに見られるような階層のあからさまな固定化がなかったために「平等」であると思われていましたが、特にバブル経済後の雇用形態の変化が持てる者と持てないものを隔てた+その比率を変えたように感じます。

「一億人総中流」という意識を持った戦後日本、これ自体が幻想だったのかもしれませんが経済が右肩上がり、賃金のレベルもあからさまにあがりはじめ、努力すれば何とかそれなりに不自由ない暮らしが謳歌できると考えられた「先の明るい」時代だったように思います。

そこからバブル経済の崩壊、雇用形態の多様化などがこれまでの生活様式、人々の意識を変えたと言えると思います。

雇用形態が日本の新しい身分制度と言っても過言ではないと思います。日本の格差や不平等、貧困の問題は、一度経済的に息詰まると何もかも失ってしまう可能性があること。
NHKの「ワーキングプア」でも取り上げていましたが、職を失うことで縁がなくなってしまう「無縁社会」に行きつくのではないかという問題提起も紹介しました。
詳細はこちら>>

中高時代からの学習塾通い、親の収入による教育格差、就職浪人など様々な人たちのストーリーを交えながら、フィリピンとの共通点、相違点を探ってもらうように授業を展開しました。

レクチャー後は学生から質問や感想を受けました。
日本の出生率について質問する学生もいました。日本は人口は減少中で、高齢化していること、日本の女性の社会進出に対するサポートが希薄である点なども説明しました。

とあるクラスでは日本人の「責任意識」はフィリピン人も持つべきとの意見がありました。貧困に陥って「血縁」を失う、繋がりが薄れるということが疑問・ショックだったようでした。

フィリピンでは何かあるとすぐに家族に助けを要請します。親が助けられなければ、その兄弟姉妹と・・・日本でも全くないわけではないこの家族・親族での助け合いですが、フィリピンでは顕著です。

経済的に困ると他の家族・親族に経済援助を要請します。助け合い大切ですが、これらの援助は長く続くものとなる場合が結構あります。個人で改善の努力をどれぐらいしているのか、それが大変問題です。ただ、日本のように個人の責任としてしょい込みすぎるというのも問題があると言えると思います。

5つクラスを持つと、クラスによって印象が異なる様子が伺えます。あるクラスは質問が多く、クラスによっては学生のおしゃべりが結構あったり、すごい静かなクラスだったり・・・授業する側も非常に興味深いものでした。

甥っ子が授業に出席しており(汗)帰宅してから授業の感想を聞きました。

「幼少期から始まる競争で一生が決まってしまう印象を受けた」とのこと、勿論フィリピンでも競争はあります。小学校から成績によって表彰されたり等々、けど社会に流動性があるため一度や二度うまくいかないことがあってもそれで全てが決まるわけではない、「フィリピン人で良かった」(汗)とも冗談半分、しかし本気で言っていました。

努力によって安定した生活を手に入れることは勿論可能ですが、親の経済状態が子どもの将来や決め、社会階層を固定化させていくようにも思われます。では社会の流動性が他国と比べて低いので、それが必要か?物事はそれほど簡単ではないと思います。

問題が複雑であるために、さまざまな方向からのアプローチが必要ですが、授業では若者を対象としているため、「若者の政治参加」について、触れました。制度が硬直化する1つは恐らくそれを許す我々の意識によると思ったからです。次世代を担う世代の意識が政治に反映されずらいままにわれわれの生活に関連する重要なことが決まっていっています。

いきなり政治に参加せよ、と言ってもピンとこない。ということがタダあると思いますが、そうした上方に触れ、必ず投票する!というところからでもはじめられると感じます。あ、また海外の選挙登録し直さねば・・・・

*じゃぱゆきさんとは、日本にエンターテイナーとして出稼ぎをしている特に女性を指す言葉で、こちらでは「売春婦」に近い意味合いで捉えている部分もあります。そういうことをするために日本に来ているわけではないのですが、じゃぱゆきさんと呼ばれる人は肩身の狭い思いをしています。



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