[ドラマ] もし、オランダの大堤防が決壊したら?海抜ゼロメートルの国・オランダ

2016年11月、オランダのNPO(Nederlandse Publieke Omroep)局で、全6回のドラマ「もし、堤防が壊れたら(Als de dijken breken)」が放映されました。オランダの沿岸部とベルギーのフランダース地方で洪水が見舞われた人々様子が5つのオムニバスの形式で描かれています。



ドラマの概要

オランダの西部とベルギーの北西部に3日間にわたって3カ月の降水量に当たる雨が降り、堤防は決壊、そして海抜0メートル以下の地域の大部分が浸水というストーリー。

首相の公務とその家族、オランダに収監されているパートナーを持つベルギー人女性とその家族、その収監されている刑務所の看守、離婚も間近な熟年夫婦、妻を亡くし鬱に陥り自殺をしようとする音楽家と洪水のためシェルターを求める女の子、それらの話が全6話を通じて展開していきます。

前世代の洪水の恐怖を知らない若い世代への教育ドラマであり、洪水という自然の脅威を通じて、
各小さな物語が仕事、家族、生きる意味、許しを象徴的に描いています。どの個人のドラマも、オランダ人の生活の一部を切り取ったような描写で、オランダ生活者でなくても非常に興味深く視聴することができると思います。

洪水に見舞われた過去

上記はパニック映画ではなく、ヒューマンドラマです。しかし、なぜ洪水がテーマになるのでしょうか。ここには、水と戦い、水を制してきたオランダ人の歴史に関わっています。

オランダは古くから水車や堤防が水害から国土を守ってきましたが、国土の1/4が海抜以下の低地であるため、過去記録に残っているだけでも900年から1900年の間に124回の水害に見舞われました。20世紀に入ってからは、1906年、1911年、1916年、そして 1953年にありました。特に 1953年の大洪水は、オランダ人々の記憶に残る最後にして、大規模な洪水です。

1953年の洪水は1月31日から2月1日にかけて起こりました。20時間もの北西からの嵐による暴風と大潮が基準海面を数メートル引き上げ、流れ込んだ水によって多くの死傷者を出しました。オランダ国内では1836名が亡くなり(近隣諸国では最大の被害者数)、損傷した家屋は47,300棟、10,000棟以上が破壊され、農地の約9パーセントが被害を受けました。

この洪水を期に、デルタ計画が計画実施され、大規模な灌漑事業が行われました。デルタ地帯である、オランダ南西部を締め切りました。

Youtube ビデオ「Holland's Barriers to The Sea https://www.youtube.com/watch?v=aUqrBV4SiqQ」では、どうやってオランダ人が治水を行ってきたのかをビジュアル的にみることができます。



この堤防がなければ、上記のドラマのようなことが起こりうるということなのでしょう。しかし、この堤防は100年どころではなく1000年の単位で起こりうる水害を想定して建設されたとのことです。これで安心!とは言い切れないまでも、水と戦ってきたオランダ人の叡智ここにありということでしょうか。

堤防が決壊したら達する水の深さがビルに刻まれています。



近隣国を旅行してオランダに戻ってくると、オランダが改めて低い土地で平らであることを実感します。ふと、ビルを見上げると場所によっては、堤防が決壊したら到達するであろう水の高さがビルに刻まれています。その高さは、ビルの4階部分まですっぽり水没する高さ。

ドラマ「もし、堤防が壊れたら」を見たあとでドラマのリアリティを壁にある目盛から感じるのは私だけでしょうか。


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