マラウィ市のIS(イスラミック・ステート)、そして戒厳令のミンダナオ島

2017年5月23日午後、フィリピンのミンダナオ島、南ラナオ州のマラウィ市でアブサヤフとマウテグループ(イスラミックステート・オブ・ラナオ)とフィリピン軍が市の中心地で交戦。テロリストをとらえるべく軍が展開され、夜にドゥテルテ大統領は戒厳令をミンダナオ島に発令しました。



事件発生

23日午後2時に武装した15名の不審なグループがバランガイで確認され、軍が展開されました。交戦は、軍が目標地域に接近している最中に起こります。
午後5時、マウテのメンバーは地元の公立病院を占拠、6時にはマラウィ市刑務所が包囲され攻撃をうけ、火災が発生。この交戦で5名の兵士が負傷し、一人の警察官、2名の兵士が亡くなりました。

政府軍はアブサヤフのリーダーであるイス二ロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)をターゲットとしています。ハピロンは、ISの東南アジアのレーダーとして選ばれ、イスラム系の反政府グループを束ねようとしている動きがあると専門家は分析。米国の重要な指名手配中のテロリストのリストに名前があり、報奨金は5百万ドル(日本円で約5億円)。

ドゥテルテ大統領戒厳令

ロシアに4日間の日程で訪問中のドゥテルテ大統領は、木曜日に予定していたプーチン大統領との会談を火曜日に変更し、またスケジュールを早々に切り上げ帰国の途につきました。その訪問中のロシアでの戒厳令の発令。

大統領は、戒厳令経験者にとっては、故マルコス大統領の戒厳令と何ら変わらない措置を講じ、また厳しく対応する旨を公の場で発表。当初は60日と言われていた戒厳令は、1年の長期にわたる可能性を示唆。

カイタノ議員は、大統領は戒厳令の発令を軽んじたわけではない、大統領の優先課題は、安全であり、ミンダナオの人々の人命と財産を守ること。大統領は、金銭的あるいは経済的な理由から人命を犠牲にできないと、戒厳令の理由を説明。

今回の戒厳令は適切な措置なのか?

今回の戒厳令は適切な措置なのか?これに答えるためにはフィリピンの厳戒令がどのような場面で発令されたのか、特に共和国成立後を振り返る必要があります。

前アロヨ政権時の2009年11月23日マギンダナオで58名が虐殺されるという痛ましい事件が起ったことは記憶にまだ新しい。これはマギンダナオ地域を支配しているアンパトゥアン一族によって引き起こされた事件で、現在も調査が続いています(証言者やその家族が何者かによって殺されています)。その事件を受け、2009年12月5日アロヨ大統領はマギンダナオ地域を限定した戒厳令を発令、しかし7日後の12月12日に解除しました。これがフィリピン共和国歴史上、2度目の戒厳令の発令となります。

1972年9月21日、時の大統領フィルディナンドマルコスは戒厳令を敷き、翌々日の23日の夜にテレビで国民に発表しました。これが共和国での初めての戒厳令。この当時の戒厳令の根拠は、共産主義系の反政府組織の脅威のため。戒厳令は、1981年1月17日までの9年間続きます。この戒厳令によって、大統領に権限が集中し、また軍は政府の脅威となる個人を逮捕できる権限が付与され、門限が定められ、グループでの集まりは禁止。後日、メディア活動は制限される、あるいは閉鎖されました。

戒厳令によって、大統領への権力が集中し、独裁を加速させました。この独裁政権下では武装した共産主義者のみならず、圧政に反対する市民活動家も逮捕され、拷問を受け、女性であれば性的暴行を受けるなど数多くの人権侵害が報告され、また多くの人命が失われました。


非常事態宣言では不十分だったのか?

テロがフランス起こった後非常事態宣言が出され、警察権限が強化されました。宣言が意味するところは、テロの疑いがあるなど、危険と思われる人物を自宅軟禁にできたり、裁判所の令状なしの家宅捜索が可能となったりします。集会やデモの禁止、人が集まる施設の閉鎖などを行い、市民の生活を制限します。一方、戒厳令のきもとなるのは、国の統治権(立法、司法、行政)の一部、あるいは全部が軍に移される点です。フィリピンでは、厳戒令ではなく、非常事態宣言ではだめだったのでしょうか。

大統領は以前から戒厳令の発令をほのめかしていた大統領。発令のタイミングを待っていたのではと思われても不思議はないのでは?とにかく動向を注意深く見守ります。

関連ブログ記事
美を追求し続けた女の執念―ドキュメンタリー「イメルダ」を観て (1)
美を追及し続けた女の執念―ドキュメンタリー「イメルダ」を観て (2)

=================================================
ランキングに参加しています。クリックお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ フィリピン情報へ
にほんブログ村

スポンサーリンク

スポンサーリンク

0 件のコメント :

コメントを投稿

Subscribe