[ハーグ観光] ウィレム5世ギャラリー(Galerij Prins Willem V)は行くべきか?

監獄博物館(Museum Gevangenpoort)の並びにあるウィレム5世ギャラリー(Galerij Prins Willem V)。お隣の監獄博物館マウリッツハイス美術館でおなかいっぱい、かつ作品点数はそれほど多くない上にチケットをセット購入しなければならないため(ミュージアムカード利用可)行くべきか悩ましいところですが、平日はそれほど混雑しておらず、また名画が展示されており、じっくりと絵画を鑑賞したいという人にはおススメのギャラリーです。

ウィレム5世ギャラリー内部
ウィレム5世ギャラリー内部
お隣の監獄博物館の込み具合が嘘のように人が少ない同ギャラリー

ウィレム5世ギャラリーとは

1774年、ウィレム5世の絵画コレクションを展示するための展示室が作られました。フランス軍の侵攻により美術品は持ち去られてしまいますが、のちにオランダに戻されます。

150点以上の展示、レンブラント、ヤン・ステーン、ルーベンスなどの作品も含まれています。これらの作品はマウリツィアのコレクションの基礎を形成しました。近年行った修繕の様子は、ギャラリー入口横のフィルム室で上映されております。そのショートフィルムでは、牢獄博物館の歴史にも少々触れており、両館の歴史を学ぶことができます。

ギャラリーの様子

展示室は小部屋と合わせて二室のみ。縦に長い展示室には所狭しと絵画が並んでいます。作品名と画家のリストが英語とオランダ語で用意されています。一つ一つじっくり観て回りたい場合は、そのリストを参照にしながら絵画を鑑賞するもよし、あるいは気になる作品をチェックし絵画リストでチェックして鑑賞も可能。

ウィレム5世ギャラリー内部2
ウィレム5世ギャラリー内部、所狭しと展示される絵画

著者は、ギャラリー中央に置かれたソファーに腰掛け、作品を目で追いながら、気になる作品をチェックしました。

ウィレム5世ギャラリー内部


ウィレム5世ギャラリー内部、ルーベンス絵画
ピーテル・パウル・ルーベンス

ウィレム5世ってだれ?ーちょっとだけオランダの歴史

これら名画を集め、ギャラリーを開いたウィレム5世とは何者か?オランダ衰退期の18世紀にオランダを統治した総督で、優柔不断で無策であったと言われるウィレム5世。彼が何者で、どういう歴史背景から現れたかちょっとだけおさらい。

ウィレム5世ギャラリーに飾られた、ウィレム5世の肖像とギャラリーの説明

市民によるコルネリス・デ・ウィットとヨハン・デ・ウィット惨殺の後、総督職をオラニエ家の世襲として定め(1674年)、政権を掌握したウィレム3世ですが、1702年ウィレム3世は急死。ウィレム3世は、女王メアリ2世亡き後はイギリス国王でもありましたが、ウィレム3世死後はメアリ女王の妹のアンが女王に即位しました。ウィレム3世と女王メアリ2世との間に子どもはおらず、祖国の父からの直系の血筋は絶え、またイギリスとオランダ両国の同君連合もこれで終わりました。

ウィレム1世の弟、ヤンの家系から出たナッサウ・ディーツ家のヨハン・ウィレム・フリゾー(ウィレム3世の従兄)がオラニエ家を継ぐことになりました。しかし、オラニエ公となった時には弱冠14歳。そして、23歳で渡し船の転覆であえなく落命します。その翌月1711年8月にヨハンの妻は男児を出産、後にウィレム4世となる人物です。

ウィレム3世死後、諸外国から翻弄されたオランダ。スペイン継承戦争に巻き込まれます。スペイン領ネーデルランドの相続は、ハーグ同盟の元オーストリアが相続することになっていましたが、フランスが軍を動かし早々に占領してしまいます。イギリスとオランダの連合軍でフランスを追い詰めユトレヒト条約を締結し、戦争が終結します(1713年)。しかしオーストリア継承戦争で、フランス軍はオランダ南部に侵攻し、オランダの危機意識が高まります。

デ・ウィット兄弟が惨殺された時代背景のような状況となります。外部からの危機、そして都市貴族が牛耳る内政への不満で、暴動が起こります。そこで、民衆は再びオラニエ家を総督に担ぎ出そうとします。1747年、ウィレム4世が総督、陸軍最高司令官に就任。しかし、4年後に没します。オラニエ家の総督を継ぐものは不運にして若死にするか、あるいは在位期間が短いのは気のせいでしょうか。

その時ウィレム5世はわずか3歳。18歳で成人し、ウィレム5世として政治の舞台に立つまでは、母親が摂政に立ちます。ウィレム5世は政治的な才能はなく、国民の不満を買うことになり、国内を逃れるように転々とします。それからフランス革命の余波を受け、ウィレム5世はイギリスに亡命。ネーデルラント連邦共和国は終わり、バタヴィア共和国が生まれました。時代に翻弄され、ウィレム5世でしたが、
監獄博物館と隣り合うウィレム5世ギャラリー
監獄博物館と隣り合うウィレム5世ギャラリー
歴史に翻弄されたウィレム5世、そしてその絵画も時代の波に曝され、一時はフランスに収奪されました。今は再び、このオランダに地に戻り、私たちを楽しませてくれています。


ウィレム5世ギャラリー(Galerij Prins Willem V)
ウェブサイト:https://www.mauritshuis.nl/en/discover/prince-william-v-gallery
メール:info@panorama-mesdag.nl
所在地:Plein 29、2511 CS Den Haag Den Haag、オランダ
開館日:火曜日~日曜日:12:00-17:00
休館日:月曜日
入場料:
大人:5,00ユーロ
子ども(19歳以下): 無料
コンビネーションチケット|マウリッツハウス:17,50ユーロ
CJP, Studenten Card, Ooievaars Pass:2,50ユーロ
Friends of the Mauritshuis:無料
Museum Card, Rembrandt society, ICOM, BankGiro Loterij VIP-card:無料

参照

モーリス・ブロール著、西村六郎訳『オランダ史』白水社、1994年出版。
佐藤弘幸『図説 オランダの歴史』河出書房新社、2012年出版。

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