フィリピンのお葬式ー冠婚葬祭に見る文化の違い

フィリピンで何度か、お通夜に出席したことがあります。日本のお通夜のムードそして死者への悼み方とは異なる、フィリピン式のお通夜に毎回驚きです。フィリピンのカトリックの家庭の一般的なお通夜、お葬式についてまとめました。

故人が亡くなって、遺族が行うこと

日本と同じく、葬儀屋に全てを任せるということも可能です。そうでない場合は、家族・親族がもろもろの手続きを行います。
ご遺体を病院から移送(自宅で亡くなった場合はそのまま)、死亡証明書を発行(発行に時間がかかりますが、これは後々遺族が年金や社会保障を受け取る際に必要になります)、通っている地元の教会に連絡、慰問客を迎える(数日)、お通夜を行う、埋葬。一見すると、宗教的な違いこそあれ日本の葬儀の流れと大きく変わりません。しかし、いくつかの違いがあります。
*教会の神父には、病状が悪化した時点で病室に来てもらい、病人に祈りをささげてもらいます。

違いその1:慰問できる日は1日だけではない!遺体の数日安置

故人の遺体には防腐のための処理(ドライアイスが利用)が施され、3日~10日ほど慰問客の最後のお別れのために安置されます。日程の開きは、遠くで暮らす親族の帰省を待つためでもあります。親族や近しい友人が早く訪れることが出来るのであれば、その期間は短くなります。
もちろん、近しい友人の親族が亡くなった場合は、早いうちに遺族を訪問します。

違いその2:香典の額はきまってない

慰問・お通夜やお葬式への出席の際は、遺族に多少のお金を包みます。日本では4や9など死や苦しみを連想させない、区切りのよい数を香典としてつつみますが、フィリピンでは包むお金の額は故人との近さにより、額に対する決めごとはありません。そしてお金がないという場合は香典(フィリピンでは香典とは言いませんが、便宜上)はなしということも。

違いその3:服装

服装は白か黒であればOKです。喪服などは特にありません。大切なことは赤、オレンジ、黄色などの暖色系を避けること。ひとによっては白のTシャツ、そしてジーンズという場合も。何ともカジュアルで驚きました。それでも著者は気が引けるのでマニラでは、きちんとした白シャツに黒いパンツスーツで慰問したのですが、地方ではそういう人は皆無でした。

違いその4:賭博と強い酒?

自宅に十分なスペースがある場合は自宅、そうではない場合はコミュニティの公共スペースにご遺体が安置されます。また、近頃は、葬儀を任された業者が借りた、あるいは所有するスペースにてお通夜が行われます。

遺族が慰問客を迎えている横で賭けごとが行われています。カードゲーム、コイントスなどです。通常それらの賭けごとは違法(と言ってもそれほど厳しく取り締まりはしていません!)しかし、人々は一晩中起きていなければならないので違法ながらも慣例として逮捕されないそうです。それらの賭けごとで稼いだお金は勿論勝者に配分しかし、一部は遺族へ葬儀費用として渡されます。男性たちはそれらの賭けごとの故に一晩中起きていることができ、そして遺族にお金も渡すことが出来きます。

また、賭けごとをするテーブルの横では、ひたすら強い酒をあおるグループも見えます。小さなテーブルにアルコール度の高い酒をひと瓶、そしてグラスは1つ。皆で回し飲みします。一部の男性にとっては、博打も、飲酒も大儀があるので、ありがたいのだとか。

フィリピンのお墓

お通夜の雰囲気

全体としてしんみりとした雰囲気はなく、皆からりとしており時々テーブルに声をかけて回る遺族とお話をし、故人について、あるいは世間話をしたりしています。遺族が恐らく一番涙を見せる場面は、神父による故人へのお祈りの際、墓地での埋葬の時かと思います。自宅では笑顔見せ、冗談を言っていた友人も埋葬となった時にはポロポロと故人を想い涙を流していました。

お棺とひよこ

時にフィリピンでは、お棺の上にひよこを放すことがあります。これは、故人が何者かによって殺害された場合に行われる慣習です。とくにドゥテルテ大統領になってから「麻薬戦争」がはじまり、国内外のメディアに頻繁に報道された光景です。ひよこは、故人を殺害した犯人の良心をつつくと信じられています。

埋葬

数日の慰問客を受け入れた後はご遺体は神父と遺族立会いのもと、いよいよ埋葬されます。棺桶ごと墓場に運ばれ土葬、あるいは四方をコンクリートで固められたお墓に収められます。

しかし、フィリピンの墓地は千差万別で、マニラの良いところの霊園は芝もきれいに刈り取られ美しく手入れされていますが、公営の墓地ともなると雑草も生え放題で、お墓も苔むし、ゴミも至るとこに落ちていたりして、日本の霊園と比較すると雑然としています。

田舎の方では公営の墓地が主流だと思われます。その公営の墓地も資金の有無によって、大きな差があります。お金がある家は、公営の墓地の一角を購入し、先祖代々の墓を作ります。予算に余裕があれば、故人の葬られた墓を囲います。

一方で、故人を弔う予算がない家庭は、”マンション”のようなお墓に、場合によっては期限付きで埋葬されます。期限付きの墓所の場合は、数年経ったのちにご遺体はお墓から取り出され、遺族の回収を待ちます。

慰問・お通夜出席の風習

慰問・お通夜に出席した際に日本では、お清めの塩を使う風習があります。それと同じように、フィリピンでも風習、あるいは迷信があります。まず、慰問・お通夜でふるまわれたもの(お菓子、キャンディー、食べ物)などは、自宅に持って帰らない。故人の霊がついてきてしまう、また家族の誰かが病気になる、亡くなると考えられています。また、お通夜に行った場合、来た道と同じ道を通らないこと。マノポ(年長者から祝福を受けるため、年長者の手を自らの額にあてる)をしないことなど、してはいけないことがあります。

改めて4月に亡くなる方が多いように感じます。暑さで弱まっていた身体で夏(フィリピンの暑さのピークは3月から5月初旬)を越せないという理由もあるのかもしれません。

R.I.P(Rest in Peace:安らかに眠れ)。

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