ICC(国際刑事裁判所)ドゥテルテ大統領に警告

ドゥテルテ大統領の就任以降、警察はこれまでにおとり捜査で1578人を殺害し、2151人が詳細不明*1の状況で死亡、死者は現在3729人となりました(2016年10月14日)。

ハーグの国際刑事裁判所
国内の麻薬関連の殺害に対して、ハーグのICC(国際刑事裁判所)はフィリピン政府に警告を発し、超法規的殺害について訴追の可能性を示唆。ICCはローマ規定にのっとり、事の成り行きを注意深く見守り、殺人示唆、殺人件数の増加等がみられれば予備調査を実施する構えをみせました。1998年にフィリピンはローマ規定に署名しており、条約に拘束されることを意味しています。

ドゥテルテ大統領がダバオ市長時代にかかわったといわれる超法規的殺人について、その殺人にかかわったマトバト氏の証言は有効とされず、公聴会はお開きとなり、まさに大統領派の思惑通りに事が進みつつありますが、そのタイミングでICCの警告でした。

economist caricature Duterte
(c) economist  の風刺画 ドゥテルテ大統領と国際社会
ICCのみならず、こうした国際社会からの圧力に対して、「国際社会フィリピンの社会を理解していない!」とフィリピンの深刻な麻薬に関する犯罪事情に触れ、また国際社会のリーダーたちは大統領本人以上に明晰ではない!、来るなら来い!恥をかかしてやると息巻き、ドゥテルテ節炸裂の反応をしています。

フィリピンの麻薬事情はもちろん深刻で、私の生活していた片田舎の小さな町でも手に入れることができ、実際麻薬を利用したご近所さんが暴れて、窓ガラスを割るなどの騒ぎをおこし、警察沙汰になりました。ガラス程度で済みましたが、麻薬がらみの犯罪がすぐ近くで起こっていることを知るきっかけとなりました。こうしたことが日常的に起こりうる環境にいると、人々の関心が麻薬あるいはそこからくる犯罪に集中してもなんら不思議なことではありません。

しかし、問題は、論理の飛躍とその政策の実現方法です。大統領はしばしば、麻薬を撲滅することが将来の世代に対する大きな貢献となる、つまり麻薬が若い世代をむしばんでおり、そこにメスを入れる必要があると主張。異論はもちろんありません。しかし、政府を挙げての大々的な政策にも関わらず、大統領派が挙げる「市民の安心感」と「麻薬がらみの容疑者の検挙」の関係のデータや専門家による裏付け、それが他の政策よりも優先される理由が説明されていません(少なくともここ数カ月新聞の記事を追っていますが、それらしいものを見つけていません。)
そして、政策の実現方法は、何よりもICC(だけでなく、国内外の人々、有識者)が問題とする、国家元首による殺人示唆・扇動、これは「人道に対する罪」になります。

しかし、大統領は麻薬の売人など、麻薬に関わるもは人間ではない!そのため「人権」としての範疇に入れるべきではないとし、また公式の場で「人道に対する罪だって? はっきり言えば、そもそも、やつらは人間なんだろうか? 人間の定義とは何だ?」とも語っており、挑発的です。

このまま殺害の件数が増え、ICCが捜査を行うことになり、罪状が詳らかになった時に国に与える影響は大きく、経済、政治のここ数年の発展が無になるような後退、国民生活に影響を与えることは必須です。

「これがオレのやり方だ!」という大統領の声が聞こえてきそうですが、政府も民主国家としての自浄作用を持ち、自ら律し、法治国家としての機能をはたしてほしいと願うばかりです。



アルジャジーラで昨日と今日にわたり、独占インタビューが放映されました。
Duterte: 'I have to strike fear' to fight drug problem

昨日10月15日にAljazeeraにアップロードされた最新のインタビューをご覧あれ!
Duterte: 'I have to strike fear' to fight drug problem Part 1



参照:
UN adviser on preventing genocide alarmed over ‘disrespectful’ comments by Philippines President
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=55180#.WAIEV4-LTIU

Philippines’ anti-drug fight ‘grabs headlines for wrong reasons,’ Foreign Secretary tells UN
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=55108#.WAIEY4-LTIU

*1詳細不明とは、バイクに乗り銃器を所持した何者かによる銃殺、これはフィリピンでよくみられる殺害手段で、バイクの後部座席のものがターゲットを射殺し、その場から早急に逃げ去ります。バイクのナンバープレートも偽造あるいは登録申請中で、特定が難しく、ジャーナリストや活動家が殺害される場合はこの手段が用いられています。また何者かが銃器で殺害した後に顔を粘着テープなどでぐるぐる巻きにされた遺体も発見されており、それらの犯行を実行したものは特定されていません。

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