オランダ、ハーグ発のフェイクニュース「シャリアトライアングル (Sharia Triangle)」とは?

「シャリア・トライアングル(Sharia Triangle )」という場所が、オランダのハーグにあると言われています。シャリア・トライアングルとはハーグのとあるムスリム(イスラム教徒)が多く住むエリアで、非公式の警察(自警団のようなもの)が住民を取り締まっているというものです。

シャリア・トライアングルとは?

シャリア・トライアングルはスキルダースウェイク(Schilderswijk)。ハーグの繁華街からわずか、2キロほどの地域。当時オランダの新聞Trouwジャーナリストであった、Pradiep Ramesar氏が近隣地域を”シャリア・トライアングル”と自らの取材記事で発表したのがきっかけで広がったものです。

 スキルダースウェイク(Schilderswijk)とハーグ中心地
Google Mapより
スキルダースウェイク(Schilderswijk)とハーグ中心地



記事のタイトルは、「もし、あなたの地域が小さな(イスラームの教えに従って生まれた)イスラム共同体となったら」。スキルダースウェイクにはムスリムがモスク(イスラム寺院)の周りに5,000人ほど生活しています。ちなみに同地域の人口は31,715人(2014年)。

後日批判された記事によると、その場所は正当派イスラムの地域となり、市の行政、警察からは見放されているため、地域社会が住民を管理監督し、正当派と呼ばれる人たちが住民の衣類、行動等についてあれこれと指図しているとのこと。

例えば、衣服の問題。とある女性は着用していたミニスカートを不適切と指摘されています。また、今までギャングの一員であった少年たちの数が減少した理由については、警察によるのではなく、アッラーの怒りを恐れたためと言われるようになりました。犬をかってい住人が、徐々に家を離れるようにプレッシャーをかけられていた、それはムスリムの多くは犬を嫌う傾向にあるから等々。

住民の女性は、イスラム教徒の慣行を擁護しており、控えめな衣類を着ることは「地元の人々に良い」と述べ、更にオランダ社会でも特に聖書地帯(Bible Belt) で生活する保守系のプロテスタントの人々の衣類も極めて、控えめで日曜日にお店は開店していないという点では類似していると指摘。スキルダースウェイクではイスラム教徒の聖なる日、金曜日に多くのお店は閉店していますと加えました。

本当のスキルダースウェイク(Schilderswijk)とは?

記事の掲載後、国際的なメディアにも取り上げられ、大臣なども査察に訪れました。そして、Trouwは記事に書かれた内容の信ぴょう性を巡って批判を受けます。

WOS Media Schilderswijk
WOS Mediaより




後日、記事の執筆者は解雇、そしてTrouwは社会的なプレッシャーなどもあり、同地域の再調査を行います。そこから見えてきたのが、貧困率・失業率・犯罪率の高さ、健康問題などは、他の一般的なハーグの地域以上に深刻であること。この地域が他のオランダの問題を抱える地域と同じ性質を持っているものの、独特の問題を抱えていることも明らかになりました。ー都市化による過密人口と110カ国からなる多様な国籍を持つ住民たち、90パーセント以上の住民の両親がオランダ国籍ではないことー等。

政府の失策?

異なる宗教・文化・人種の人たちがバランスよく町に点在する住環境を提案できなかった政府の失策であると非難する声があります。

かつてオランダは、柱状社会を形成しておりました。柱状社会とは、社会的価値感や理念を共有している人たちだけで生活圏を構成し、それ以外の人たちとは交わらず自己完結し棲み分けるシステム。カトリック、プロテスタント、人権、ヒューマニストと別れ、これらによって教育も住居空間も分けられていました。のちのち、イスラム系移民の増加から、イスラムも柱の一つとなりました。柱状社会は80年代ぐらいには、人口の移動や、ムスリム人口の増加などによって解体されたといいます。また、ムスリム社会による柱の再生がオランダ社会を複雑化しました。

この柱状社会がオランダの「寛容さ」を理由づける要素であるという識者もいるものの、これによって培われた寛容さは、無関心と紙一重であることも指摘されています。また、各コミュニティが独自の文化やアイデンティティを強化し、柱状化社会を再度構築することに警鐘を鳴らす声もあります。

シャリア・トライアングルはフェイク・ニュースでしたが、その背景にはオランダ社会が予測しないスピードで進み、多国籍化し、そしてこれまで経験しない変化を遂げていることと無関係とは言えないのではないでしょうか。いずれにしても、グローバル化の問題とは切っても切れないこの問題、ベストな回答を見つけるには時間がかかりそうです。


参考記事
NEWSPAPER EXPLAINS "HAGUE SHARIA TRIANGLE" RETRACTION
Janene Pieters 2015年5月15日発行
NL TIMES
http://nltimes.nl/2015/05/15/newspaper-explains-hague-sharia-triangle-retraction

JOURNALIST BEHIND HAGUE JIHADIST STORIES FIRED
Janene Pieters 2014年11月12日
NL TIMES
http://nltimes.nl/2014/11/12/journalist-behind-hague-jihadist-stories-fired

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